わいせつ等事件簿

国のマスクはいつ来るの―。政府が新型コロナウイルスの緊急経済対策に基づき、約466億円を投じて各世帯に2枚配布すると決めた布製マスク。4月7日の閣議決定から既に1カ月以上経過したが、愛媛県内では出産予定日が近い妊婦を除き、一般家庭などへの配布は始まっていない。手作りマスクの利用者が増え、これまで品薄だった使い捨てマスクが市中に出回り始める中、5月14日の緊急事態宣言解除後も一向に届かない状況に「もう不要」と冷ややかな声も聞かれる。
 厚生労働省はホームページ(HP)で布製マスクの「都道府県別全戸配布状況」を公開しているが、17日現在で愛媛県は「準備中」のまま。感染者の多い地域から配布されることもあり、東京都は一足早い4月17日に配布を開始したが、2、3番目の配布地となった大阪府と福岡県の配達が開始されたのは5月12日になってから。スピーディーな対応にはほど遠い。
 厚労省に現状を問い合わせたところ、愛媛県内への配布時期は「未定」。一部で不良品が見つかったことを受け、メーカーや国での検品に時間がかかっていると説明する。「HPに記載がある通り5月中の配布は可能か」という問いには「そこを目標に努力している」と述べるにとどまった。
 「第2波、第3波に備えて、もらえるならもらっておきたい」。松山市道後湯之町の70代の無職女性は手持ちのマスクを熱湯消毒しながら使っているが、コロナ禍の長期化を懸念し、少しでも手持ちを増やしておきたいという。一方、銀天街にある大西食料品店の女性店主(72)は「必要ない」ときっぱり。「マスクが市場に出回り始めており『欲しい』という声を聞かない。まだ間に合うなら別のことにお金を使ってほしい」と冷めた視線を送る。
 実際、県内のマスクの入荷状況は少しずつ改善傾向にある。レデイ薬局(松山市)は5~7枚程度が入った少量包装のマスクについて「店舗によってはある程度在庫を持てる状況になってきている」。ドラッグストア「mac(マック)」を展開する大屋(西条市)の担当者は「依然として国内メーカーの供給は不安定」としながらも「中国やベトナムといった国外産の商品は2~3週間待てば入荷できている。夏に向かって少しずつ需要と供給のバランスが取れてくるのでは」と見通す。
 政府のマスクは県内でも一部に届いている。6月中旬に出産を控える松山市の女性(36)の元には、一足早く妊婦を対象とした布製マスクが国から送られてきた。「妊婦の方々へ」という手紙とともに、ビニールに入った縦9.5センチ、横13.5センチの布マスクが2枚入っていたという。
 妊婦に配られたマスクを巡っては、異物混入や汚れが見つかり、回収・検品作業に時間がかかっている。女性は「早めにマスクを送ってもらい、妊婦のことをちゃんと考えてくれていることは分かったが、もっと慎重に取り組んでほしい」と複雑な心境をのぞかせた。